



2013.03.04
写真家 武藤盈さんのこと
僕が暮らす長野県富士見町の信濃境駅周辺(通称さかい)の村人の日々の営みをありのままに撮影し続けた写真家がいた。その人は武藤盈(みつる)さん。
僕がさかいに引っ越してきた3年前に当時の区長さんが、近くの集落に住んでいるという盈さんの写真集「昭和30年代 農山村の暮らし」(農文協)というぶ厚い写真集を貸してくれたのが最初の出会いだった。その写真に写る人や風景はとても温かく、人々が春夏秋冬 前向きに生きる様子が写し撮られていた。
この写真を撮った人に一度会ってみたい。近所の人に頼んで武藤さんのお宅にお邪魔したのが去年の11月の終わり頃だった。
風邪気味にもかかわらず写真の話やおいたち、世間話などたくさんの話をしてくださった。そして近々本を出版するとも。とても99歳とは思えない意欲にすっかり圧倒されてしまった。
それから数日後、沖縄の離島での撮影を終え、長野へ戻る途中に知人から武藤さんが亡くなったとの連絡があった。
当に、武藤さんを思いながら沖縄の離島で人々の営みを撮影した後だった。
それから、武藤さんと通じていた何人かが集まり写真展を開くことになった。とても追悼展とは呼べる代物では無いにせよ、
少しでも多くの人に武藤さんが見つめた美しいさかいの営みを感じてもらいたかった。
そして、ここ「さかい」がこれからも素敵な場所であってほしいという願いも込めて。
(今回の展示は終了しましたが、またかたちをかえて写真を見ていただく機会を作ってゆくつもりです)